作って終わりにしない――成果につなげるWeb活用と、誠実に向き合う支援

 

Webサイトは「作ること」が目的になっていないだろうか。本来、事業を伸ばすための手段であるはずのWebが、十分に活用されていない現場は少なくない。そうした構造に疑問を持ち、「作って終わりではないWeb活用」を掲げて事業を立ち上げたのが、だいしんシェアオフィスYUMEARATA会員の山下竜志さんだ。誠実であること、正直であること。その姿勢を貫きながら、中小企業のWeb活用に向き合っている。今回は、そんな山下さんに独立の背景と事業にかける想いを聞いた。

 


Webの価値が、「作るもの」から「成果を生むもの」へと変わった瞬間

山下さんは、もともと飲食業界で働いていた。店長として現場を任される立場にあったが、「このままでいいのか」という漠然とした思いが拭えなかったという。そこからプログラミングを独学し、スクールを経てWeb業界へ。エンジニアとしてのキャリアをスタートさせた。

飲食店で培ったコミュニケーション力は、エンジニアの現場でも大きな武器になったという。営業やデザイナーとの橋渡し役を担い、入社から1年半で重要なポジションを任された。その後は自ら部署を立ち上げ、マーケティングや営業の統括、イベントの運営、チームマネジメントまで、事業運営の中核を担うまでになった。

転機となったのは、マーケティングに深く関わるようになってからのことだった。そのときのことを山下さんはこう振り返る。
「エンジニアの頃はHPをただの箱もの、会社の自己紹介くらいの感覚で作っていました。でも活用の方法次第では、ここまで成果に直結するんだと実感したんです」

 

 

新設した部署でマーケティングに注力したところ、HP経由の問い合わせが目に見えて増加。そこから数千万円規模の売上につながった。
「事業拡大にも採用にも使える。HPに対する認識が、根本から変わった瞬間でした」

一方で、業界の外に目を向けたとき、強い違和感を覚える出来事があったという。
町の小さな飲食店のHPを見せてもらったときのこと。制作の現場を知る山下さんからすれば、1日で作れるような内容で、更新もされていない。それでも制作費は300万円であった。

「正直、驚きました。本来HPは事業を伸ばすための投資なのに、集客にも売上にもつながるとは思えないような内容だったんです。」と口にする山下さんの表情に、少しの憤りが混じる。

Web業界の内側と外側には、埋めがたい情報の差がある。その不透明さを利用して、強引な営業が行われるケースも少なくない。そうした構造に、明確な課題意識を持つようになった。

 


「作って終わり」にしない、Webとの向き合い方

Web制作の現場には、もうひとつ見過ごせない課題がある。それが「制作して終わり」というビジネスモデルだ。山下さんはこの構造に警鐘を鳴らす。

会社も人も日々変わっていく。当然、会社の顔であるHPも更新され続けるべきものだ。しかし、1ページ追加するだけで多額の費用がかかることもある。

「そうなると更新をためらう会社がほとんどだと思うんです。結果としてどんどん古くなって、集客力も落ちていく。外からの見られ方も悪くなってしまう。それで数年後にまた高いお金を払って作りかえて、という繰り返しで」

こうした構造に対して、株式会社アイポジーはメスを入れた。まず初期費用を大きく抑え、成果につながるHPを手の届く価格で制作する。そのうえで、月額15,000円(2026年4月現在)で追加や修正を柔軟に依頼できるプランを採用している。始めやすく、続けやすい仕組みだ。

 

 

「HPは作ってからが始まり」と山下さんは続ける。
「たとえば店舗ビジネスの場合、閑散期にキャンペーンを打つとなると、バナーを用意して中のページも作らないといけない。そういうことを気軽に相談してもらえる関係でありたくて。うちは公開して終わりではなく、お客様の状況に合わせて継続的に更新していきます」

もうひとつの特徴が、制作時の担当者がそのまま運用も担当する専属担当制だ。制作会社によっては納品後に担当者を変更するなか、「当社では納品後も担当が変わらないため、お客様の事業への理解が途切れず、スピード感を持った対応ができます」と専属担当制の利点を付け加える。

この距離感の近さは、お客様にも好評だ。あるイベント主催者からは「相談すれば、なんとかしてくれるという安心感が一番の魅力」という声があり、そのサイトは公開後に月間数千人が訪れるようになった。飲食店を運営する企業からも「LINEや電話で気軽に相談でき、常にサイトを最新かつ最適な状態に保てる」「HPを起点に新しい施策へ挑戦できるようになった」といった評価が寄せられている。

 


成果につなげるために、「目的」から考えるという姿勢

山下さんが初回のヒアリングで最も大切にしているのは、Webサイトを作成する目的を明確にすることだ。
「作ること自体がゴールになっている方って、実は多いんです。でもあくまでHPは手段。どうして作りたいのか、何を解決したいのかをまず聞きます。それがHPでは解決できないことなら、"SNSから始めましょう"と提案することもあります」

 

 

自社の受注にはつながらなくても、そのお客様にとって最適な手段を提示する。取材中、山下さんは何度も「誠実であること、正直であること」という言葉を口にしていた。
「お客様のためにならないことは提案しません。上手くいかなそうだと思ったら、最初の段階で正直に言います」

話はさらに、仕事のやりがいへと及ぶ。
「完成したHPを見て "めちゃくちゃいいね" と言ってもらえるのも嬉しいんですけど、それ以上に嬉しいのは、"おかげで売上増えたわ" とか "いっぱい人が来てくれるようになったわ" という言葉ですね。作ったものが、ちゃんとお客様の成果に結びついて、それを喜んでくれる。そこが一番やりがいを感じる瞬間です」と目を細くする。

 


価格ではなく、「価値」で選ばれるために

価格が手頃であるがゆえに、「安すぎて不安」と感じる方もいるという。しかし、その不安は初回の面談で払拭できると山下さんは話す。
「200社くらいの候補の中から30社に話を聞いて、それでうちを選んでくださった企業さんもいらっしゃいます。」
他社と比較したうえで、「提案の質がまったく違った」と評価される理由は、初回の段階から具体的な提案を行う点にある。「事前の調査と仮説をもとに、戦略まで落とし込んだ提案を心掛けている」と説明してくれた。

 

 

価格を抑えられる理由もシンプルだ。
「広告宣伝にお金をかけていないことが大きいですね。ありがたいことにお客様がお客様を紹介してくださるので」と控えめに話す山下さん。
紹介が集まるのは、その仕事ぶりへの信頼の表れなのだろう。


一人ではなく、仲間と

山下さんが独立を決めた背景には、「自分で事業をやりたい」という高校生の頃からの想いがある。フリーランスではなく法人としたのには、前職の経営者への深い敬意があった。
「"ガッツポーズではなく、ハイタッチをできる会社にしよう" という考え方の会社でした。一人で "よっしゃ" というのではなく、チームで達成を分かち合う。僕も、仲間とハイタッチをしたいんですよね」

 

 

未経験で業界に飛び込んだ山下さんを受け入れ、育ててくれたのも前職だった。
「何もない状態の自分を、前の会社がまるっきり変えてくれたんです。あの経験がなかったら今の自分はいないと思います」

次は自分が返していく。その思いを山下さんはこう言葉にする。
「だからこそ、今後入ってきてくれる社員にも同じような経験をさせてあげたいし、お客様にも返していきたい。関わるすべての方に前向きな変化を届けたいと思っています」
それが企業理念の「make positive」に込めた想いだという。

社名の「アイポジー」は、ジャマイカのレゲエ文化にある「I&I」という言葉が由来になっている。「あなたと私」ではなく「他人のことも自分のことのように考える」という思想に、「positive」を掛け合わせた造語だ。

最後に会社としての目指す姿を聞くと、返ってきたのは意外なほどシンプルな言葉だった。「みんなを連れて社員旅行に行きたいですね」と山下さんは笑う。
その表情に、これからのチームのあり方が滲んでいた。


 

あとがき

 

山下さんは飲食への通勤の行き帰りにプログラミングの勉強を始め、スクールでは2か月間、毎日12時間を勉強に費やしたという。そこからエンジニアとして現場に入り、マーケティング、営業、事業運営と領域を広げてきた。その地道な積み重ねが、今の提案力や対応力の土台になっている。

HPは、正しく活用すれば事業を大きく変える力を持つ一方で、その力を引き出すには、制作者との関係性も欠かせない。「相談すれば、なんとかしてくれる」。そうした言葉が自然と生まれる関係を築いてきたことが、紹介だけで仕事が広がっている理由なのかもしれない。

ただ作るだけでは何も変わらない。
どう使い、どう改善していくか。その積み重ねが、やがて事業のかたちを変えていく。 山下さんの仕事は、その変化に誠実に寄り添い続けることにある。
YUMEARATAにいると、その姿勢は日常のふとした場面にも表れている。オンラインや電話でお客様とやり取りをする山下さんの様子からは、相手の状況を丁寧にくみ取り、ひとつひとつ誠実に向き合っていることが伝わってくる。
だいしんシェアオフィスには、そうした姿勢で挑戦を続ける事業者が集まっている。

 

 

(執筆:YUMEARATAセンター長 辻 和樹)

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